理事長メッセージ【日本の食・地方創生への思い】
協会立ち上げのきっかけ
― まずは、離島振興地方創生プロジェクトをなぜ立ち上げたのか教えてください。
千野 2019年に、中村法道長崎県知事より「長崎のために援助して頂けないか」というお話を頂き、私は、長崎県のシニアドバイザーに就任しました。
長崎の島々を船で回ってみて、ひしと感じたのは「人口減少」の現実です。1960年に比べて2015年は、6割も減の12.4万人。島には、「今生きていくための産業がない」のです。産業があれば、島外に出た若者も戻ってこられる。
そのためにまず、島の産業の原点である1次産業をバックアップする。「第1次産品を島内で加工し、付加価値を生み出し本島に持っていく仕組みをつくりたい」それも「同じ志を持つ仲間と長期的に取り組みたい」と考え、協会を設立しました。
ー現在の状況はいかがでしょうか。立ち上げから今日までどんなことが見えてきましたか。
千野 コロナによる厳しい社会情勢下で協会は動き始めました。しかし協会の正会員・賛助会員は現在110社を越えています。長崎県とは2020年に業務委託契約を結びました。6月末、7月初頭に長崎の五島、新上五島、壱岐、対馬を廻り、県知事・副知事や各島の市長とも面会していきました。生産者の方々への説明も終わり、キックオフの段階に入っています。
目指すのは、バリューチェーンの構築と
島の生産基盤づくり
ー具体的にはどんなことに取り組まれているのですか。
千野 協会が取り組む事業には大きく2つあります。
1つは、バリューチェーンの構築です。
島の産物は種々さまざまあり、それぞれの商品に見合った販売手段で支援していきます。生産者には2~3年で様々な手法を経験してもらい、最適な販売方法を選択してもらいます。協会設立発起人の3つのベンダー(㈱日本アクセス、三菱食品㈱、ヤマエ久野㈱)とも協力しながら販売を支援します。
今後は、㈱東急ストア、㈱阪急オアシス、㈱万代を始め、会員のスーパーマーケット企業とも協働を広げていきたい。外食では、すでに大起水産㈱が島の産品の買い付け・販売に入っていただいています。㈱サンクゼールや㈱SL Creationsは、社長自ら買い付けに島に入られています。
来年2月には海外マレーシアでの販売会も行います。中小企業庁の補助も取得し、バックアップしていただけることになりました。また、EC(eコマース)にもチャレンジします。㈱日本食糧新聞社、㈱サンクゼールがそれぞれ立ち上げるサイトを活用させていただき、準備を進めています。これらは一例ですが、正会員の皆様に関わっていただくことで、色々な販売の方法を取ることができる、非常にありがたいことです。
2つめは、生産基盤の構築です。
島の生産性をいかに上げるか。現在、農産系のプロジェクト4つ、水産系のプロジェクト1つと五島夢プロジェクトの計6つが動きはじめました。
例えば農産系プロジェクトでは、福江でも多くみられる耕作放棄地を活用したい。そこで、手間暇のかからない「さつまいも」や「桑」の栽培により、焼酎、かんころ餅、マルベリー、桑茶の製造が始まります。
さらに、島のオピニオンリーダーを育てる産学官一体の「五島夢プロジェクト」も動きます。
すでに㈱ニチレイ、MVM商事㈱、㈱酒悦などが関わってくれています。いずれは、商品開発の視点から、㈱ロッテ、フジッコ㈱、山崎製パン㈱、㈱伊藤園など、正会員の方々の知識を活かして、生産基盤整備に協力をいただきたいと考えています。
東京と長崎の距離は約1,200kmありますが、この距離のハンデを0にする。リコージャパン㈱協力のもと、東京と離島をダイレクトにつなぐ、島内の情報インフラの整備を長崎県に提案していくことも考えています。
1人が100歩進むのではなく
100人が1歩ずつ歩んでいく
ー今後の展望を教えてください。
千野 4月に立ち上がり、今、ようやく稼働し会員企業が参画し始めています。ゆくゆくは正会員150社、賛助会員500社を目指し、共に歩んでいきたい。「1人が100歩進むのではなく、100人が1歩ずつ歩んでいく」これを合言葉に取り組んでまいります。これまでも離島に関する団体はたくさんありますが、私たちは後発組として、生産者第一義としてやっていきます。
これまでになかった経験。長崎から成功モデルを
― 島の皆さんの反応はいかがでしょうか。期待の声などは聞こえてきますか。
千野 現在、会員は様々な小売業が参画しています。実際に島に訪問し、何百万円単位の商談が行われています。
「自らが商取引に参加してものが動く、これが今までになかった経験だ」と生産者の方々の声として伺っています。協会にも生産者の想いや期待がひしひしと伝わってきています。
県・市職員皆さんの取り組む姿勢も非常に前向き、真剣であることを感じます。県知事も「一緒にやっていきましょう」とおっしゃっていただき、各島の市長にも伝わって、当協会と長崎県が二人三脚で離島振興を推進する機運が生まれてきました。
これからも目的に向かって、1つの役割を担っていただける同じ志の方々に集まって欲しいと思います。そして長崎で成功モデルを創り、他県へと広げていきたいと考えています。
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